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(6)タイムズ紙1記事の真偽とその背景
1)新聞記事の真偽
以上の分析結果を総合すると、本研究の発端となったタイムズ紙の記事は、事実をそのまま伝えるものとは考えにくい。ヒアリングによって得られたコメント(表−8)も、そのことを裏付けている。

表−8:新聞記事に対するコメント一覧

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出典:ヒアリングをもとに作成

 

2)なぜこの記事が書かれたのか
この記事が事実を述べていないとすれば、なぜこのような記事が掲載されたのであろうか。記事には何らかの意図と背景があるはずである。
ヒアリングのコメントの中に「対日戦勝記念日にうまい話をでっちあげたものだ」というものがあった。『対日戦勝記念日(VJデイ)』とは、第二次世界大戦において日本が降伏文書を調印した日あるいは終戦記念日を指す。「この日には、元軍人のリタイアメントたちは戦争時を思い出し、改めて対戦国・日本への怒りを語り合うのだ」(旧住民)というコメントからわかるように、英国民にとっては、この日は特別な意味を持っている。そして、記事が掲載された1995年は、終戦後50周年であり、例年になく盛大にこの記念日を祝い、各報道機関がこぞって「反日感情」を煽った。中でもタイムズ紙は「リタイアメント達に支持されている新聞」(旧住民)である。そしてこの「リタイアメント達」こそ、湖水地方に移住してくる「旧都市住民である新住民」の中心層なのである。
「新住民」は、湖水地方での観光客全般に対して好感情を抱いていない。しかも反日感情の強い層である。彼らが日本人観光客が非難される記事を歓迎しないはずがない。その彼らに支持されているのが、タイムズ紙である。「あの新聞社にアンチ・日本人がいることは知っていた」(日本の旅行業者)というコメントが指摘するように、この記事は、英国の優れた自然環境を象徴する湖水地方が抱える観光入込上の課題と、住民が潜在的にもつ「反日感情」を巧みに利用した記事であり、VJデイを祝うためのエピソードの一つとして執筆されたものだったのではないだろうか7)。湖水地方の大学生も、「記事を売るためにはよくやる手段だ。別に珍しいことではない」とコメントしている。
(7)記事が及ぼした影響
1)現地における観光関連業者の反応
この記事に対して、最も素早く対応したのは、現地で日本人観光客を数多く迎えているホテルの経営者であった。「記事が出た後、ミーテイングを開いて記事が誤りであることを社員に周知徹底し、引き続き歓迎の方針を出した」「取引がある日本の旅行業者に忠告を促した」等、彼らは自分達

 

 

 

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